コントリインタビュー

枯れない花「ラスティングフラワー」で地球環境の改善に貢献【有限会社Ark net】
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2022.12.16
お祝い事など、人生の転機で必ず活躍するのが「お花」ではないでしょうか?お花には人を幸せにしてくれる力がありますよね。
今回は、そのような「お花」に30年以上関わられてきた有限会社Ark netの中三川 恵美 社長にインタビューをさせていただきました。
お話を聞けば聞くほど出てくる数々のドラマにコントリのインタビューチームも涙しました。
それでは、中三川社長の熱い想いをぜひ感じてみてください。有限会社Arknet
有限会社Arknetの事業について

コントリ編集部
多方面でお花に関する事業をやられてるんですけれども、簡単に伺っても良いでしょうか?

元々は生花店なので冠婚葬祭用のギフトフラワー全般を提供していますが、その中でも特に力入れてるのは「枯れないお花を作る事業です」。お花というのは普通は枯れてしまうので最終的には捨ててしまいますが、できれば「ずっと枯れない状態で飾っておけたらいいな」という需要に特化しようということで、花を生のままのような状態で加工したものを作りました。
大事な方からいただいたお客様のお花をお預かりして「あなたの花が残せますプロジェクト」というものをやっております。

それがこのラスティングフラワーというものなのでしょうか?

そうですね。以前は「プリザーブドフラワー」という言葉しかなかったのでその言葉を使っていましたが、出来上がったものを皆さんに見ていただいた際に、プリザーブドフラワーとは違うという意見が出ました。確かにほぼ別物と言っていいほどの違い があります。

ちなみに、プリザーブドフラワーとラスティングフラワーの具体的な違いを教えていただけますでしょうか?

まず触った感じが違います。プリザーブドフラワーというのは大手のメーカーが計画を決めて何種類かしか作りません。バラやカーネーション、ランなどがメジャーなところです。
計画生産で大量に作られるので、色々な種類の花を加工するのは難しいんです。

プリザーブドフラワーは、あくまでその決められた規格の中で作っているのでしょうか?

プリザーブドフラワーは、ある意味工業品的にな面を持っていまして、統一的なデザインになっています。その中で色のバリエーションは多々あります。カーネーションが分かりやすいですよね!10個のプリザーブドフラワーがあったら、10個全て同じような顔になります。
一方、ラスティングフラワーというのはそのままの状態を保てるようにするので、例えば3分咲き、5分咲き、満開、それぞれの状態を保存できます。ラスティングフラワーが10個あったら、10個全て違う顔になります。だから生のお花と限りなく近いものを提供することができます。
今では主要な花はラスティングフラワーにすることができようになりました。ここまで来るのにたくさんの実験を重ねてやってきました。ラスティングフラワーを作るためには、特殊な液体に花を浸していくのですが、この液の配合バランスが花によって変わってきます。
現在に至るまで6年かけてずっと最適な配合バランスを探す作業を繰り返してきました。

かなりの手間と時間がかかる作業ですね!

この実験をやるにあたって、かなりの数の生の花をつぶしてます。そのぐらい色々なパターンの実験をして、自然の生花に近いテクスチャーを調べていきました。
このように、経験値があってこそできることなので、この専用の液があるからといって簡単に真似できるってものではないんです。
事業を始めたきっかけについて

ラスティングフラワーを始めたきっかけになった具体的なエピソードを伺ってもよろしいでしょうか?

ラスティングフラワーを始めようと思った頃、私が運営するスクールでは押し花をやっていました。当時は押し花でブーケを残すのが流行っていました。生徒の1人が結婚式のブーケを残したいということで押し花にすることを提案しましたが、それでは嫌だと言われてしまいました。立体のまま残したいというのが要望でした。当時、お花を立体で残せるのはドライフラワーぐらいしかありませんでした。
ただ、ドライフラワーですとポロポロしてしまうので長い間はもちません。色も変わってしまいます。ではどうやって残したらいいのか?ということで様々な文献を調べました。その当時(今から20数年前)、プリザーブドフラワーというものが世の中に出てきたタイミングでした。
ですが、私がたどり着いた某プリザーブドフラワー研究会社の場合は、白いお花を真っ白な状態で残ませんでした。特にブライダルブーケを残そうとした時に白が真っ白にできないのはちょっと致命傷です。どのようにして真っ白な状態で残せるのか?これが大きな課題でした。
実はラスティングフラワーの産みの親は私だけでもなくもう1人います。その彼が様々な文献を見たりしてくれまして、そんな中で宇都宮大学の教授との出会いもありました。やりたいことが実現できるということが分かったのですが、それでもなかなかやり方を確立するまでには至りませんでした。失敗に失敗を重ねました・・・

化学実験のようなことをされてきたのですね!

液の配合や温度、湿度なども全てチェックしていきました。その花が一番に生花に近くなる条件を調べていきました。ただ、そういった作業は私の性格的には合わなかったので彼に任せました。
お花の良さをそのまま提供するだけではなく、一歩踏み込んでいかに新しい価値を届けるかという視点が大事だと考えています。
そういった気持ちが先行してしまって、技術は後でみたいな感じでした。とにかくそのブーケを綺麗に残したいという気持ちが先で、どういうやり方ができるのかを実験していきました。

素敵ですね!想いを原動力にしてやられてきたのですね。

そうです!想いありきですよ!!
できるかできないかではなく、やってみよう!という感じです。
今までで感動した出来事について

お客様にお花を提供するだけでも価値を与えてらっしゃるのに、そこをもっと踏み込んで、どうしたらお客様に喜んでいただけるだろう?その一心だったということですね。

そうなんです。その後も、別のエピソードがありまして。
サッカーチームに入っていた10代の男の子が交通事故で亡くなってしまうということがありました。サッカーチームのメンバーがお花でサッカーボールを作って遺影の横に飾ってくれましたのですが、それを見たお母様が「これ絶対に残したい!!」ということで、栃木県内のお花関係のことをやられている人の所にブーケを持って聞いて歩かれました。
20軒目でようやく弊社に来てくれました。20軒も回れるその気持ちは本当にすごいです!

本当にすごいですね!その間にもお花は枯れていってしまいますよね。。。時間との勝負ですね!!

結局、その花は枯れてしまいました。ただ、その花の写真を持ってきてくれました。写真を見ればどんな花なのかというのは分かるので、すぐ市場を通してこの花を探してもらい、直ぐ、ラステイングフラワー加工をしたものを持っていったら「なにこれ!!そっくりです!」と言われ涙流して感動してくれました。こっちももらい泣きしてしまいました。
世の中には同じようなことを思っている人がたくさんいると思うので、ラスティングフラワーの技術をもっと広げたいと思っています。そうしないと、花のその時の状態を残せる機会を逃してしまいますからね。
そのためにラスティングフラワーの販売チャネルをたくさん増やしたいと思って色々なところに顔を出して、ラスティングフラワーのお話をしたりしています。
宝塚の方が投げた赤いバラを絶対残したい!というお客さんもいらっしゃいました。半分腐ってしまっているのですが、この状態でもいいから時間を止めて欲しい。そういうご依頼でした。
これをラスティングフラワーにすると、本当に半分腐った状態で出来るんですよ(笑)それでもお客様は満足して帰られました。
これから先にも「残したいお花」がある人との出会いはあるでしょう。そのような時に、その要望を叶えられるようにしていかないといけないと思っています。

本当にそうなって欲しいと思います。そんな想いを伺っていたら涙が出てきてしまいました。
